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大学からのお知らせ

本学教員2名が公益財団法人飯島藤十郎記念食品科学振興財団の学術研究助成に採択されました

 このたび、地域未来デザイン工学科の兼清泰正准教授とフォン チャオフイ助教が、公益財団法人 飯島藤十郎記念食品科学振興財団による2023年度学術研究助成(個人研究)にそれぞれ採択され、4月19日(金)に山崎製パン総合クリエイションセンター(千葉県)で開催された贈呈式において、研究助成金が授与されました。

 本財団の学術研究助成事業は、米麦その他の主要食糧等を原料とする食品の生産?加工?流通並びに食品科学に関する研究等を行う研究者及び研究グループに対して研究助成金を交付するものです。

 今回採択された研究課題は以下のとおりです。

研究課題「アミロースが示す分子認識機能の力学的制御」―兼清泰正准教授

研究概要

 天然の多糖であるアミロースはデンプンの主成分であり、わが国、とりわけ北海道?オホーツク地域において豊富に産出する再生可能資源である。アミロースはラセン状の高次構造を形成し、その空洞内部に種々の化合物を包摂できるが、このようなアミロース分子認識機能を活かした材料開発は活発には行われてこなかった。
 本研究では、アミロースの持つ高い機能性と環境適合性に着目し、従来に無い発想に基づき、アミロースの分子認識能力を外部からの力の印加により制御する方法論の開発に取り組む。具体的には、アミロース鎖同士を化学的に架橋することによりポリマー(ヒドロゲル)を作製し、これを外力により変形させながら、様々な化合物に対する結合能力を測定する。ここで、外力によりアミロース鎖のラセン構造が変形すれば、ラセン空洞内部の形状も変化するため、化合物に対する分子認識能力が変化すると考えられる。もし、物質の吸着量を可逆的にOn-Off制御できれば、保存中は香気成分を逃さず保持し、使用の際に外力で変形させて香気成分を揮散させることのできる機能性食品や、環境中の有害物質を一旦吸着し、分離回収した後、再び有害物質の除去に用いるといった、繰返し使用可能な“環境にやさしい”環境浄化材料が実現できる。
 また、外力による変形の度合いによって物質の吸着選択性を制御できれば、対象物質に応じて変形度を調節し、狙った物質のみを保持?分離できるようになる。さらに、薬用物質を包摂させ、必要な時に外力で変形を加えた後、体表面に貼付するなどの手法により、薬物除放システムへの応用も可能になる。

研究課題「文旦蜜柑果皮抽出フラボノイドを添加したソーセージの非破壊評価研究および深層学習」―フォン チャオフイ助教

研究概要

 日本では年間約40万トンの果汁が消費されており、静岡県のJA食品工場においては年間約2,000トンのみかんが処理され、1,000トンの廃棄物が発生している。廃棄された柑橘類果皮は、そのまま肥料として埋め立てられるか、動物の飼料として使用される、あるいは乾燥後に漢方薬の原料として中国に販売されている。
 柑橘類果皮由来のフラボノイドは、抗酸化、抗菌、抗ウイルス、抗炎症、抗アレルギー、抗癌などの生理活性を持つ優れた天然食品成分であるにも関わらず、大部分は廃棄されている。最新の文献によると、フラボノイド(ヘスペリジンやルチンなど)はCOVID-19のメインプロテアーゼに対して、ネルフィナビルよりも優れた結合親和性を持っており、COVID-19に対する治療薬の出発点としても考えられる。先行研究では廃棄されたセビリア産ビターオレンジの皮からのフラボノイド抽出を実現したが、皮が薄くその収率は非常に低い。このため、日本の外皮の厚い柑橘類(文旦蜜柑)は原料として期待される。一方、ソーセージにおいて天然ケーシングである動物の腸管は品質にばらつきがあるため、加工中に破裂が生じて生産効率が低下するという問題があるが、今回開発した改質ケーシングでは、ソーセージ製造中に発生する圧力が解放され、破裂を低減することができた。
 しかし、これまでの研究はケーシングの改質のみに限定されており、改質ケーシングは多孔質構造を持つため、脂質酸化や微生物侵入が容易になり、風味や保存性の低下する可能性も懸念されるため、その対策として天然の抗酸化物質および抗菌物質の添加が必要と考えられる。近赤外ハイパースペクトルイメージングは試料からスペクトルと空間情報を同時に取得でき、様々な特性の可視化に有効な実験手法である。本研究では、廃果皮抽出物の添加による新たな改質腸に詰めたソーセージの非破壊特性評価し、ソーセージの品質向上を目指すとともに北海道の主要産業である食肉加工業へ貢献する。


贈呈式の会場入口 (左から)兼清准教授、フォン助教

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